サルマネ(年始の挨拶に代えて)

明日から仕事が再開するという夜となって初めて、この文章が仕上がろうとしています。メンバーからはとかく急かされてしまっていて実に情けないです。「年始のご挨拶」と題して書き出したお決まりの文句と時系列に並んだ昨年の活動の報告は、退屈でうんざりするほど。自分から生まれたものなのにと言いかけましたが、ここにあるのは体裁だけです。いつになったら自分らしい言葉で自分らしい物語ができるのでしょう。自分らしさということについて言えば何も文章に限った話ではありません。インプロにしてもそう。インプロは今も借り物のままです。

ところで、SAL-MANEというこのチームの名前は文字通り「猿真似」を元にしています。手元の辞典に拠れば「猿真似」とは、「しっかりとした考えもなく、他人のすることの上辺だけをまねること。軽蔑を込めていう語。」とあります。実はこの名前だけは高校生の頃に発想して温めていたものです。その当時から僕は自らの器用貧乏さを自覚していました。そのくせ自分のものを作り上げるということに対する執着だけは甚だしく、いずれ大成してやろうという気概だけは並々ならぬものがありました。とはいえ元々、根気も本気もない性分なので、「僕のすることなんてどうせ人の猿真似なのだろう」というやさぐれた気持ちだけが先に立ちました。そういう想いから、妙にしっくりくる言葉だと思いました。当時はバンドをやるものだと考えていたので、SAL-MANEという名前もバンド名となる予定でした。もちろんその時はインプロのイの字も知らずにおりました。
そして学部3年の春、高尾隆准教授の授業を受け、僕はインプロと出会いました。今となっては思い出も美化されてしまったようで、実に衝撃的な出会いだったように記憶しています。半期の授業が終わり、熱に浮かされるようにインプロチームを作りたいと考えました。手軽そうだからとかそういう考えもあったに違いありませんが、「これを手放してはいけない」という得体の知れない気持ちに捉われていました。こうして数年来温めてきたSAL-MANEの名を冠した団体が生まれました。ノートの片隅で永遠に埋もれてしまいかねないあの時の熱病の痕跡が日の目を浴びることとなったのです。そしてその名の通り、猿真似の日々が始まりました。
 
あれから早くも5年の月日が流れました。今は6年目のシーズンの只中です。依然として細やかであることには変わりありませんが、SAL-MANEという名称はあるインプロチームの名前として認知されるようになりました。中にはサルマネと読む人もいます。「正しい読み方は…」などと訂正するつもりはありません。サルマネは正しい。少なくとも今の僕たちはサルマネの域を脱していないと思います。いつになれば自分らしいインプロが実現できるのだろうと思うと卒倒してしまいそうです。
しかし、それこそが僕たちの歩みだと確信しています。少し前の自分たちのインプロがあまりにウソ臭く見えることが多々あります。少し前の自分たちの言っていることがあまりに浅薄だと思えることが多々あります。少し前の自分たちのインプロが借り物で、少しも自分のものになっていないと感じます。そのズレの分だけ、僕たちは前に進んでいるに違いありません。サルマネの道はまだまだ続きますが、それにしてもずいぶん遠いところまで来たように思います。
インプロがうまくなったように見せることに比べて、インプロがうまくなることは本当に難しいです。インプロを理解することに比べて、インプロを納得することは本当に難しいです。チームとしての時間を重ねることに比べて、チームとして洗練していくことは本当に難しいです。そのことを痛感して、もがいているのが今のSAL-MANEです。だからこそ今は誰よりも真摯にインプロと向き合って歩みを進めていきたいと思っています。また、それに関わる自らと向き合うことも避けたくありません。見かけだけの挑戦はしばらく止すことにします。それよりも毎月毎月の定期公演に心血を注いで、最先端の僕たちを表してみたいと、そんなことを考えています。
 
年始の挨拶としてあまりに暑苦しい文章となってしまいました。メンバーにもうんざりされてしまうかも知れません。でも申し訳ないけれど、僕はこういう人となりの人間です。彼らには、「しょうがないなあ」と諦めて今年もまた活動に付き合ってほしいなと思います。趣味的活動のように続けていくことは、もう僕にはできそうにありません。楽しさの形は年々変わってきています。

そういうわけで、今年は例年以上にSAL-MANEの定期公演に足を運んでいただきたいなと思っています。そこで行われていることが、その瞬間の僕たちの最先端のものです。厳しい言葉も甘んじて受けたいと思います。そのうえで次の公演にも足を運んでもらえると嬉しいです。そこでなにも変わっていなければ僕たちはその程度だということです。さようならはその時に。
さて、早速、今月の23日(土)にインプロフェスティバル以来となる定期公演インプロ公演vol.27「ピーナッツバターといちごジャム」を予定しています。会場はcoupe cafeを離れ、東中野バニラスタジオに変更となりました。そこは特別なものはなにもない真っ白な空間です。そこには観客のみなさんと僕たち、そしてその間にインプロだけがあります。シンプルにインプロを楽しんでもらいたい、そして楽しませたい。今年も多くのみなさんと時間を共有できることを、心から楽しみにしています。
 
長くなりましたが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
みなさんのご多幸を心よりお祈り申し上げます。
 
2016年1月11日(月・祝)
SAL-MANE代表
木村大望