トッコ演劇工房「なにもない空間」ふりかえり

こんにちは、うつみです。

SAL-MANEのもっちーとうつみは11月7日~9日にかけて、トッコ演劇工房を対象にインプロのワークショップと公演を行ってきました。トッコ演劇工房は11月9日に栃木県芸術祭で「なにもない空間」と題したインプロ公演で出演するため、そのサポートとして私たちが招かれた形です。

私たちはトッコ演劇工房に向けてワークショップを1日目の夜と2日目の午前・午後に合計で約10時間ほど行いました。そして3日目午前の公演にはディレクターとして出演しました。

このワークショップ・公演はともに大変充実した時間となりました。ここではファシリテーターとして今回のワークショップおよび公演のふりかえりを書いてみようと思います。

マインドを共有する

今回のトッコ演劇工房の公演名「なにもない空間」はピーター・ブルックの『なにもない空間』という本からとられたものです。そして私は偶然にも先日「ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古」という映画を観ており、「マインドを共有する」というテーマについて関心を持っていました。(これについては「インプロにおける「準備」について」という記事をご参照ください。)

そこで、今回はひとつのテーマとして「マインドを共有する」ということを持ってワークショップに臨みました。具体的なワークとしては、初日はワンワードを重点的に行いました。

ワンワードを行う際、これまでは「隣の人が受け取りやすいように」という意識で行うことが多かったのですが、今回はより抽象的に「そこにあるストーリーを共有しながら行う」ということを試してみました。「隣の人が受け取りやすいように」という形の方がたしかに具体的でやりやすいのですが、お互いを直接見なくてもより深いところで繋がることができるということを試してみたいと考えていました。

しかし、やはり抽象的であるために難しさもあり、1日目の段階では「なんとなくそういうものがあるのは分かるが、実感としてはまだ得られていない」というところに留まったように思います。最初はより具体的なところから始め、次に抽象的なところに進んだ方がより理解しやすかったのかもしれないという反省が残りました。

辛くなったらすぐにアゲイン

1日目のワークショップは3時間でしたが、そのうち約半分はワンワードをやっていました。後半は少し観点を変えて、「辛くなったらすぐにアゲイン」というテーマでワンワードを行いました。ただしこれは先ほどの「マインドの共有」と別の話ではなく、マインドの共有が場全体を意識しながら行うものであるなら、こちらは自分を意識しながら行うものと言えるでしょう。(なお、「隣の人が受け取りやすいように」は相手を意識しながらのものと言えるでしょう。)

初めのうちはもっちーと私のふたりが順番にディレクターとなり、やっている人たちが苦しそうに見えたらすぐにアゲインを出すという形式でやりました。繰り返しているうちに参加者自身も自分が楽しんでいる状態と楽しんでいない状態に繊細になってきたため、最終的には自分たちでアゲインを出す形式にしました。

この日は最初からかなり踏み込んだワークをしたため、最後の1時間はディレクター付きのフリーシーンをひたすら楽しんでもらい1日目のワークショップは終了となりました。

ノンバーバルに繋がる

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今回のワークショップにあたってはトッコ演劇工房からの要望として「シーンを自分たちで始めたい」というものがありました。そこで2日目の最初はウォームアップもかねてシーンを始める時によく決めることをみんなで書き出しました。

そして午前中の後半は立ち位置を変えることで見えるものが変わってくるというワークを行いました。また、そこから発展してシーンを始めることもしました。インプロをしているとどうしても「何かアイデアを出さなければ」という気持ちになってしまいがちですが、本来は「アイデアは自然とやってくる」ものであることを実感として得てもらえたように思います。そして昨日の「マインドを共有する」という話がここで繋がったように思います。

また、途中「5人並んでいる中で2人だけ座る」というワークも行いました。これは5人が横に並び、それぞれが立ったり座ったりする中で座っている人を常に2人に保つというシンプルなワークです。このワークをやっていると身体が「立ちたい・座りたい」と思って動いているのか、それとも頭が「立たなければいけない・座らなければいけない」と思って動いているのかが、やっている方にも見ている方にも分かり興味深い時間となりました。

最終的には私たちも含めて「8人並んでいる中で3人だけ座る」というワークも行いました。この人数になると誰も座っている人数が見えなくなり、自分の「立ちたい・座りたい」という本能に従うしかありません。しかしワーク終了後にすぐビデオで確認してみたところ、まだ多少頭で考えて合わせることができた「5人並んでいる中で2人だけ座る」ワークよりも動きの質的にも数の揃い具合的にも向上しており、自分が本来持っている力の豊かさに改めて気づかされました。

午前中のこれらのワークは、もしかすると参加者よりも教えている私たちの方に大きな気づきがあったかもしれません。「批判的な自分ではなく、自然発生的な自分に従う」というのはキース・インプロの基本的な考え方であり、私たちもそれを信じていましたが、今回のワークを通してよりその考え方を強く信じられるようになったと思います。逆に言えば、これまでの自分たちはまだまだ「こうしなければいけない」という考え方に囚われている場面が多かったことに気づかされました。

今回の気づきは理論と実践の関係についても改めて考えさせられました。理論は実践の中から導かれるものですが、その理論から実践を行うことで実践はよりシャープになり、また理論もより力強くなるという循環関係を実感することができました。そしてこれは同時に「教えること」の価値についても気づかされるものでした。

2日目の午前が終わった時点で、今回のワークショップはひとつの到達点に達したように思いました。もちろん更に別の観点からシーンを捉えることもできますが、時間の制約もあることから今回はここまでとし、2日目の午後は公演に向けて実践的な内容に移りました。ここでは2回のミニショーを行ったり、ペーパーズやファントムといった公演向けのゲーム・フォーマットの確認を行いました。

楽しい時間を共有する

約10時間のワークショップを経て、3日目の午前にいよいよ公演を迎えました。今回はトッコ演劇工房の8人が役者、SAL-MANEの2人がディレクターとなって80分の公演を行いました。

最初のうちこそ緊張が見られましたが、10分もするといつも通りの姿が現れてきました。また後半になるにしたがってお客さんの集中力・想像力も高まり、それが役者にも影響し、とても興味深い場になったように思います。

公演はワンワード・ハットゲーム・ペーパーズといったゲーム、ファントムというフォーマットを使いながらも、その他は全てシーンで構成されました。「自分たちからシーンを提案する」という課題は残りましたが、「シーンを中心とした公演にする」という目標は達成でき、なによりみんなが楽しめた公演になったと思います。

私たちはどみんごからキース・ジョンストンのインプロを学び、途中キース以外のインプロを学ぶこともありましたが、ここにきてまたキース・インプロ(のより深いところ)に戻ってきたように思います。キース・ジョンストンは「インプロはその人のグッド・ネイチャーを見せるもの」と語っていますが、今回トッコ演劇工房のメンバーが舞台の上で伸び伸びと演じている姿を見て、「本当にキースの言う通りなんだなぁ」と改めて思いました。

公演後にはトッコ演劇工房のメンバーから「もっとやりたい」という声が上がっていました。そしてすでに12月に次の公演を行うことを決めたようです。SAL-MANEとトッコ演劇工房はこれからもお互いによりよいインプロを探究し合う関係になれればと願っています。

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うつみ