トッコ演劇工房「3日でつくる演劇講座」ふりかえり

こんにちは、うつみです。

さて、SAL-MANEはゴールデンウィークの5月3日~5日にかけて、栃木の演劇部に入っている高校生を対象にインプロのワークショップとショーを行ってきました。これはトッコ演劇工房の「3日でつくる演劇講座」の企画として行ったものです。

ワークショップは1日目・2日目のほとんどと3日目の午前に行いました。そして3日目の午後には成果発表として90分のショーを行いました。ワークショップでは紆余曲折がありましたが、最終的にはとてもよい形で終わることができたと思います。またショーも大成功と言ってよいものとなりました。

このような企画は以前にも銀河ホール学生演劇祭がありましたが、この時は主に小学生が対象となっており、高校生を対象とした企画は今回が初めてでした。また、演劇部の部員を対象にワークショップやショーを行ったのも初めてです。そのため、私たちにとっても初めての経験が多くありました。

そこで、ここではファシリテーターとして今回のワークショップおよびショーのふりかえりを時系列に沿いながら書いてみようと思います。

コミュニケーションゲームからインプロゲームへの難しさ

1日目の午前中はボールで遊んだ後に「名前を呼んで移動する」「木とリス」といった簡単なゲームを行いました。ゲーム自体は単純なものですが高校生のエネルギーは高く、特に「木とリス」の盛り上がりは大変なものでした。

十分に場が温まったことを確認して、続いては「私は木です」という身体を使った連想ゲームに進みました。私たちの予想としてはこれまでのゲームの延長としてエネルギッシュに行われるだろうと思っていましたが、実際にやってみるとそれまでの勢いがピタッと止まったかのように静かな雰囲気になってしまいました。その後はインプロについて説明した後「インスタントストーリーの素」を使って簡単な物語作りを行いましたが、物語自体はできているものの難しさを感じながら作っているように見えました。

協働でアイデアを出す

1日目の午前中ではアイデアを出すことに抵抗が見られたので、午後は協働でアイデアを出すゲームを中心に組み立てていきました。自分ひとりでアイデアを出そうとすると責任が重くなりますが、協働でアイデアを出すことによってアイデアを出す負担を下げようという試みです。

内容としては「魔法の箱」というふたりで物を取り出すゲームを行いました。最初はひとりでひたすらアイデアを出すパターン、次に相手からヒントをもらってアイデアを出すパターン、そして最後には出したアイデアを二人で深めていくパターンをやってみました。

このゲーム自体はなかなか反応が良く、午前中と比べるとかなり楽しそうにアイデアを出し合っているように見えました。しかしやはりこの後もいろいろなゲームをやれどシーンにつなげるまではできず、1日目のこの日は多くの課題を残したまま終わりとなりました。

882380_688464427887290_966734224575230519_o

演じることの楽しさからインプロの楽しさへ

2日目の午前中も「リア・ハンド・ホップラー」「カテゴリーゲーム」といった簡単なゲームから始めました。やはりゲームにおけるエネルギーは高く、特にカテゴリーゲームは熱狂と言ってよいほどの盛り上がりを見せました。

その後は「ワンボイス」「ワンワード(なんでも博士)」「さしすせそ禁止ゲーム」といったいわばベーシックなゲームを進めていきましたが、やはりインプロの要素が出てくると固さが感じられました。

インプロで初めて大きな盛り上がりを見せたと感じられたのは、午前中最後に行った「ステータス」を使ったシーンでした。ステータスとは簡単に言えば人物の偉さのことです。これをシーンに入れることによって、シーンの印象を変えるということを行いました。そしてこれが大爆笑を起こしていました。

ステータスは演じる力が必要になるため、ワンボイス・ワンワードといったゲームと比べるとアドバンスの要素だと考えていました。しかし、演劇部の彼ら・彼女らにとっては演じるということが楽しさのベースにあるということが分かりました。

いいシーンがあれば説明は要らない

インプロにとって「楽しい」ことは生命線です。演じている本人が楽しくない状況では、見ていて楽しいシーンはまず生まれません。ステータスでは演じている本人たちが夢中になっていました。その結果、見ている側も夢中になれるシーンが生まれました。

そしてこのようなシーンが生まれたことで、ワークショップ自体もスムーズに進むようになりました。いいシーンが出ればその意味を細かく説明する必要はありません。反対に、どれだけその意味を説明したところでいいシーンが出なければ人は変わりません。1日目のワークショップでは説明が多くなっていましたが、2日目のワークショップからは説明が少なくなりシーンに集中できる状態が増えたように思います。

この日の最後には短いショーを行いました。ショーはワンボイス・さしすせそ禁止ゲームといったすでにやったゲームを中心に行いましたが、午前中よりもずいぶんと活気があるように見えました。特にさしすせそ禁止ゲームではこれまで繰り返し伝えてきた「失敗を楽しむ」という姿が思い切りあらわれていて、見ていてとても気持ちがいいものでした。

1621686_688467327887000_2019790739972081338_n

演じることの楽しさ再び

3日目の午前中は再びボールで遊んだ後に、少しストレッチをいれてすぐにシーンに移りました。1日目・2日目ではもっと温める必要を感じていましたが、3日目には参加者のインプロに対する期待が変わっているため、もうシーンに入って大丈夫だという感覚がありました。

シーンは「ティルト(関係の変化)」から始めました。ティルト自体はどれもディレクションによるものでしたが、ディレクション以外の部分でもシーンがずいぶんと豊かになっていました。失敗しても大丈夫という安心がシーンの中で遊びを増やしているように見えました。

午前中の後半は「ジブリッシュ」を使ったシーンを行いました。ジブリッシュとはめちゃくちゃ言葉のことです。これは前日のステータスを更に超える盛り上がりを見せました。特にジブリッシュジョークのシーンは私たちが見てきた中でも最高のものを見ることができました。「失敗を楽しむ」ことと並んで私たちが繰り返し伝えてきた「相手を輝かせる」ことがシーンとなってあらわれた瞬間でした。

ジブリッシュもステータス同様演じる力が必要になるものですが、やはり彼ら・彼女らにとっては演じることが楽しさのベースなのだろうと思いました。

興味深い関係によるショー

3日目の午後は成果発表として90分のショーを行いました。ディレクターが付き、その中で役者がゲームやシーンを行うというワークショップをそのまま見せる形式のものです。今回は26人の出演者がいるため、前半・後半に分けて45分ずつの出演という形にしました。

ショーはワークショップでやったゲームや設定を中心に進めていきましたが、中には新しいゲームや設定も盛り込みました。ワークショップでは繰り返し「失敗を楽しむ」ことを伝えてきましたが、それは挑戦をするためです。今回のワークショップで高校生たちはすでに失敗を楽しむことを身につけていました。だからこそ私たちはショーの中でも新しいことに挑戦することができました。

高校生たちはこれまでの成果を十分に発揮し、会場はたくさんの笑いに包まれました。楽しいシーンが続いたショーだったと思います。しかし総体として見るとただ楽しいだけのショーではなく、興味深い関係を見せられたショーだとも思います。

ショーでは挑戦がありました。また、多くの助け合いがありました。そしてもちろん失敗もありましたが、それもまた受け入れあって楽しいものになっていました。

今年の「3日でつくる演劇講座」は一本の作品を作り上げるものではありませんでした。しかし、この興味深い関係はまさに「3日で作り上げた演劇」と言えるかもしれません。そして私たちはこの関係がこれからも続いていくことを期待しています。

うつみ

10314029_688470357886697_8739442261881566776_n